今宵、月の照らす街で
同時刻、天玉院の間。


成二は大剣を片手に、魔を滅しながら玉座に向かう。


不思議とその剣は手に馴染み、いつも扱う108の大剣よりも軽く、かつ成二の些細な要求にも応えられる程の扱い易さがあった。


―――行ける!


確信と自信と共に風を纏いながら、更に突き進む。


「ここから先は通さない」


その言葉に、成二の脚が止まった。


―――コイツ…!


片目に十文字傷を負った、長髪の男の纏う覇気に、成二は動く事が出来なかった。


「小龍沢の血を継ぐ者と聞いて来てみれば…まだこの様な子供とはな」


―――強い!!


成二の、剣を握る力が強くなる。男は成二の右手に収まる大剣を見を見つめた。


「純粋なる風と、その大剣…懐かしい」


「…この剣を知ってるのか?」


成二の問いに、男は静かに答えた。


「…天叢[アメノムラクモ]」


「…!!」


その名に、成二の瞳が大きく開く。


「かつて源平の合戦にて失われた三種の神器の一つも、本来の持ち主の血を継ぐ者の力で召喚できるのだろう?…嵐玉の力で」


全てを知ってる、その口調。


「あんた…何なんだ?」


「フォルセティ。……フォルセティ・アナンベル」
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