今宵、月の照らす街で
「お邪魔よ、アナタ」


「!」


アナンベルの顔目掛けて、鋭い脚技が飛ぶ。その蹴りを避け、アナンベルは身構えた。


「ほう………」


「残・念で〜した。もう、好きにはさせない」


扇子を広げ、口元を隠しながらアナンベルに敵意を見せる。


「明奈さん!」


成二の前に立つ明奈の姿に、紘子が声をあげる。


「兄さんとカオル、そして葉月の事、キチンと懺悔なさいよ、元長官様?」


扇子をパチンと閉じ、近くに立つ廉明をそれで指す。


「フ…まずはアナンベルを倒してみよ」


「はいはい。首を洗ってなさいよ」


廉明からアナンベルに視線を戻す。


視線と視線が一直線になり、互いの出方を伺う中で、アナンベルが先に仕掛ける。


アナンベルが剣先を後ろに隠しながら攻める。剣閃が見えないまま、間合いに入り、刀を振る。


明奈はその動きを完全に捉え、剣閃を扇子で流す。


「!!?」


「ハズレね」


そのまま、間合いを完全に支配した明奈が気を練りあげる。


「円舞・銀双月[エンブ・ギンソウゲツ]」


明奈の波動が、アナンベルの鳩尾を襲う。アナンベルは再び後ずさり、もう一度刀を構えた。
< 280 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop