今宵、月の照らす街で
「貴様…やるな」


「どーも」


明奈が再び扇子を開いた。


「でも、やっぱり私じゃ相応しくないからなぁ」


「…何?」


扇子を仰ぎながら、明奈は視線を下げた。


「アナタ、風を使うようだし。だったら、このコが闘う方がいいわ。アナタが如何に身にあまるモノを扱おうとしてるか、わかると思うしね」


その言葉が終わると同時に、成二が立ち上がった。


「…何!?」


アナンベルが不可思議な顔を浮かべる。


「…まだ立ち上がるか」


成二はふらつき、明奈の肩に手を置く。もはや、アナンベルの言葉は聞こえていなかった。


「よく立ったね…?でも、せぇじ……」


「わかってますよ…」


明奈の言葉が続く前に、肩で息をしながら成二が言った。


「立ち上がったからには、アイツはぶっ潰します」


血を流しながらも、決して強がりではない、意志の強い瞳に、明奈は安心した。


「じゃ、行っておいで」


成二は明奈の声に押され、一歩前に出た。
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