今宵、月の照らす街で
「何故…小龍沢の一族は、いつもそこまで立ち上がる………!!」


アナンベルが怒りの形相を向ける。


「…何を…そんな怒ってんだ?」


成二が呟く。


「…いや、違うな…焦ってんのか?」


「!!」


アナンベルがハッとした顔を浮かべる。


「…黙れ!!」


アナンベルの持つ風の力が爆発したように吹き出す。


同じ軍勢の筈の魔の存在を消し飛ばす程のその力に、成二は怯まず、その風を真っ向に受けながら立ち続ける。


「俺は貴様の父親から力を奪い!貴様の父親の心を壊した!俺の“風”と“力”こそが最強!長子でもない貴様如きの風に負ける筈がない!!」


その言葉に、成二がしばらく沈黙した。


「…だから懐かしい感じがしてたのか」


成二の天叢を握る力が強くなる。


「風が最強とか、そんなんじゃないと思う」


吹き荒れる風に、成二の皮膚の傷が増えていく。しかし、成二はその中を歩き始めた。


「風は、自由気ままだ。剛が全てじゃない」
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