今宵、月の照らす街で
多香子は妹弟の無事を確認し、微笑んだ。


そのまま、時宮やスタッフ達を二人に任せる事を決め、多香子は意識を廉明に向ける。


廉明が瓦礫と土煙に呑まれている状況にも関わらず、多香子は走る。


段々と加速し、空いた手を翳して風を操る。瓦礫と土煙は振り払われ、薙刀を構えた廉明が現れる。


「奇襲か」


「バッチリ対策してるくせに!」


多香子の嵐紋菊一文字と廉明の薙刀がぶつかる。


「それ…月輪菊一文字村正[ゲツリンキクイチモンジムラマサ]ね」


一度ぶつかった刀と薙刀を引き、再び激しく武器がぶつかり合う。


多香子の攻めを柄で交わし、刃筋を翻しながら細かい攻撃で攻め返す。


瞬時の多数の攻撃に、多香子も僅かに刀をずらしながら対応する。


「ふんッ!!」


細かい攻めから大きな攻撃に変える廉明に、多香子も刀を大きく振り、攻撃の出所を防ぐ。廉明はぶつかった武器の接点を軸に回転し、多香子に脚技をぶつける。


「………ッ!!」


多香子の側頭部を重い一発が襲い、若干よろめく。


「…風よ!!」


多香子は咄嗟に竜巻を起こし、自分の状況をマイナスから戻すと共に、プラスに転じようと、風ごと刀を一振りした。


「嵐蒼絶空!!」
< 293 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop