今宵、月の照らす街で
轟音が広間に響く。


嵐に、嵐を纏った刀でぶった斬る。ふたつの台風がぶつかり、炸裂する力と、多香子の真っ直ぐな一閃。


驚く事に廉明は、それを喰らいながらも多香子の前に現れ、攻撃を再開する。


「覇断[ハダチ]」


下段からエグるような攻撃に、多香子は刀に風を付加し、逆手で構えながら守に転じる。


風で物理的な流れをコントロールし、その業を流そうとするが、多香子の眼に、風を裂く廉明の刃がハッキリと映った。


コンマ数秒の出来事を完全に把握した多香子は、すぐに数歩下がる。


「何?」


―――今の………?


多香子自身も己の出来事をイマイチ理解出来ていなかった。ただ…


―――葉月と闘った時と…同じ………?


自分の眼を覆い隠すように瞼に触れる。その多香子を見て、廉明の歯が軋んだ。


「光風霽月………!!」


だが、多香子の様子から能力の支配に不完全さを感じ取り、廉明が攻め続ける。


「わっ!」


自分の事から闘いに意識が戻り、一度刀を遊ばせる。


柄を回転させた事を利用し、刀を廉明の素早い攻撃に合わせる。


その最中、廉明の動きが視覚情報として完全に入力され、同時にその先すら見えていた。
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