今宵、月の照らす街で
道場には静けさが広がっていた。


「他に部員は?」


「いない」


そう。創部者は成二自身。かつて創部に携わった人は幽霊部員で実際には活動していない。


活動自体、ただ居合をするだけだからこの現状も仕方が無いと成二も思っており、元々は自身が扱う武器の範囲を広げたかったから創部したと言うのもあった為、部員が居なくてもさして問題では無かった。


「じゃあ入ろうかな」


「そうか……………え?」


「私、サムライになってみる」


―――おいおいおい。


思わず言葉を失う。だが、断る理由はどこにも無い。


「…サムライにはなれないが、やってみるか?」


そう言うと、言葉も無く満面の笑みを浮かべて頷いた。
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