今宵、月の照らす街で
ソフィは驚く程に刀の扱いが上手かった。


その理由を聞けば、祖父が日本人で、剣術を心得ていたらしい。


流派は北辰一刀流。


かの坂本龍馬や山南敬助を門下生にする、江戸では名を馳せた流派だ。


「で、私はそれなりにサムライな訳なのよ」


―――さ…侍って…


どうも彼女の侍とは、居合など、武芸を嗜む者を指すらしい。


今日はソフィの見学兼初部活と言う事で、剣を持たせ、心得を話す事だけしかしなかったが、彼女はそれでも充分に満足したらしい。


終始その蒼い瞳に好奇心を宿して話しに食いついていた。


「っともうこんな時間か」


気付けば6時半。もう下校時刻だ。


「…残念」


「また今度話してやるよ」


そう言うと、少し沈んでいた彼女の顔がパッと明るくなる。


「うん」


「じゃ、帰ろう」
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