今宵、月の照らす街で
夕暮れの江戸城迎賓館前の御堀は、茜色に染まって暖かい雰囲気に包まれる。


政都の夕暮れは、車のテールランプがあちこちで瞬き、道行く人はみな、家族の下へ向かっていた。


成二の右側にはソフィがいる。こうして誰かと一緒に帰るのは久しぶりだ。


「セージ」


「あ?」


「あなたはいつも、何を考えてるの?」


―――?


急な質問に、疑問符だけが浮かび上がる。


「みんなと話してる時、いつも違う世界にいるよ?」


的確な発言。


確かに、成二はクラスメイトとの会話を楽しんだ事は無かった。


―――俺と深く関われば、確実に死に近付いちまうから。


そう頭の中で答えても、彼女の耳に届くはずはない。


ただ、道行く車のエンジン音だけが耳に留まるだけだった。


「まぁ、いつか話す…」


―――霊気?


会話の途中に、ふと成二の身体中を寒気が走った。


それは、確実に、人に成らざる者が近付いて来る、と言う徴候―――


―――こんな街中で、かよ!!
< 33 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop