今宵、月の照らす街で
「多香子、ケータイ鳴ってるよ」
「あ、うん」
有楽町マリオン前。
多香子は、ケータイの着信を友達に教えてもらい、受話器のボタンを押す。
「はい」
「室長、成二から緊急コードです。場所は江戸城迎賓館内。本庁近衛警備部から入りました」
電話越しに冷静な声が聞こえてきた。
オペレーターの飯森あずさ[イイモリアズサ]の声だ。
何気ない日常に、急な判断を迫られるのは、多香子にとっては、よくある話。
彼女はマニュアル通り、友人に急用を告げた。
「ごめん、みんな!編集部から呼び出しだ…」
作家である為、そう言うと、友人は温かい言葉をくれるが、内心は心苦しい。
しかし、それが裏で生きる一族の運命だと、多香子は割り切ってきた。
そして友人と別れた後、再び受話器越しに会話を続けた。
「壱番隊を派遣して。私もすぐ向かうわ。あと、敵は?」
あずさは冷静に報告を続けてくれた。
「霊視加工映像解析、種別は鬼神…霊濃度はSS、おそらく式神かと」
「了解したわ」
「あと…民間人一名を確認しました」
「…急ぐわね」
多香子のケータイを閉じる音が、いつもより強い。
―――あの子、無理しないといいけど…
「あ、うん」
有楽町マリオン前。
多香子は、ケータイの着信を友達に教えてもらい、受話器のボタンを押す。
「はい」
「室長、成二から緊急コードです。場所は江戸城迎賓館内。本庁近衛警備部から入りました」
電話越しに冷静な声が聞こえてきた。
オペレーターの飯森あずさ[イイモリアズサ]の声だ。
何気ない日常に、急な判断を迫られるのは、多香子にとっては、よくある話。
彼女はマニュアル通り、友人に急用を告げた。
「ごめん、みんな!編集部から呼び出しだ…」
作家である為、そう言うと、友人は温かい言葉をくれるが、内心は心苦しい。
しかし、それが裏で生きる一族の運命だと、多香子は割り切ってきた。
そして友人と別れた後、再び受話器越しに会話を続けた。
「壱番隊を派遣して。私もすぐ向かうわ。あと、敵は?」
あずさは冷静に報告を続けてくれた。
「霊視加工映像解析、種別は鬼神…霊濃度はSS、おそらく式神かと」
「了解したわ」
「あと…民間人一名を確認しました」
「…急ぐわね」
多香子のケータイを閉じる音が、いつもより強い。
―――あの子、無理しないといいけど…