今宵、月の照らす街で
「もしもし」


オペレーターのあずさからの着信で、多香子はまたケータイを手にした。


「室長!別働隊として霊的異常発信源に派遣した弐番隊が全滅。部隊の生存者…ありません…ただ、紘子は重症ですが、生きています」


―――え?


部隊が全滅なんて、聞いたことが無い。


ましてや紘子が居ながらそんな事態に見舞われる事を、多香子は全くと言っていいほど考えていなかった。


多香子には性質の悪い冗談とか…誤情報としか思えなかった。


「…場所は?」


「日比谷公園にて紘子を保護、死体発見は警視庁ヘリポートです」


場所は近い。一刻も早く向かいたい衝動に駆られた


「第一級警戒体制を敷きます。各局に発令して頂戴」


「了解」


通信が切れて意識をこの場に戻すと、千鶴が近くにいた。


「…ここは任せて」


話を聞いていた為に事態を呑めていた千鶴に、多香子はただ黙って頷き、車に乗り込んだ。
< 46 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop