今宵、月の照らす街で
辛うじて108本の剣を総動員しても、成二の身体から、打撃を受けた感覚は消せなかった。


痛みに耐えて眼を開くと、剣の壁と成二の間に明奈が立っていた。


「大丈夫?」


明奈は両手に扇子を広げている。その扇子には、微かに気が宿っていた。


「あ…明奈さん…?俺を…庇って…?」


明奈は少し息を弾ませて微笑みかける。


そしてそのまま崩れ落ちた。


「明奈さん!」


成二は急いで明奈を支える。


「…大丈夫、少し疲れただけ。後は頼むね…」


静かに眼を閉じた時、焦りを覚えたが、静かな寝息が聞こえるまで時間はかからなかった。


明奈は“頼むね”、そう一言言った。


師の言葉は死ぬ気で守らねばなるまい。


休む師を抱き抱えてると、剣の壁に穴を開け、再び仮面の者と対峙する。


ただ、もう立場は変わった。


―――あいつは“敵”。


「…宮内庁陰陽課対策室伍番隊隊長、小龍沢だ。アンタを逮捕する」


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