今宵、月の照らす街で
「来たれ、嵐」


風の気を従えて、剣を翼の如く背中の両側に大きく広げる。


剣一本一本に“剣圧”を秘めている為に、今までコレを見たたいていの敵は一歩下がって来た。


しかし、今回は違う。


何も感じていないのか、仮面を付けた顔を傾けていただけだった。


余裕な敵に少しイラッとなり、ボールを投げる様に左腕を思いっ切り振る。


同時に左側から36本の大剣が仮面を目指して、風を切る音を奏でて36本の光の尾を引いた。


敵は剣に気付き、身体を幅広く揺らす。


剣が的を射抜いた瞬間、突如後ろに殺気を当てられ、反射的に大きく地を蹴って前宙した。


直感的にさっきの揺れの正体が残像とわかり、自分が今まで居た場所を見つめれば、敵が鋭い鈎爪を突き出していた所だった。


―――速い!!


着地と共に、“翼”の中から最も大きな大剣を選び抜き、剣先を敵に合わせながら柄を顔の横へ。


一秒もかからない、この慣れた動作をして、後ろ脚に力を込めた。


「破ノ五月雨<ハノサミダレ>」
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