今宵、月の照らす街で
“破ノ五月雨”。


風の気を軸足に纏い、全身を連動させることで“音速”まで達する、超速の連続突。


―――捕らえたッ!!


剣先が仮面に接する瞬間が己の眼によって映し出される。その刹那、剣が仮面を貫いた感覚が手に残った。


―――まだだ!!


どこか剣が軽く感じる。それに顔を射抜いた感覚は全く無い。


文字通り“全身全霊の突き”が大気の流れを乱し、それが急にストップしたために、辺りには急に突風が吹き荒れる。


ビルの床にはヒビが入り、砂塵が巻き起こる。


風の気を纏う俺には何の心配も無く砂塵が自然と身体を避け、相手だけを真っ直ぐ見据えることが出来た。


そしてその先に見た顔は…


「さ…西蓮地隊長…!?」


そこにあるのは、自分の眼を疑う光景…


その顔は確かに先日殉職した弐番隊隊長・西蓮地国春[サイレンジ クニハル]その人だった。


「隊長!!」


自分の声とは思えないほど荒く、大きな声で怒鳴る。


しかし隊長の目は虚ろで、首を傾げながら視線を滅茶苦茶に走らせていた。
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