今宵、月の照らす街で
「だってせーちゃんはもう東京で…」


「何度も言うがあの血族は荒ぶる風を纏う者だ。いくら我が血筋が三柱の一角と言え、小龍沢には遥か及ばぬ」


「違うよ、せーちゃんは小龍沢だからじゃなくて努力してるんだよ!私だっておじいちゃんに月宮清真流槍術皆伝を貰ったのに、なんで?」


半分泣きそうになりながら訴え続ける葉月と、眼を伏せながら断固拒否する廉明。


「…室長。失礼ですが」


つい、助け船を出す明奈。


「今回壱番隊に同行させるのはいかがですか?」


廉明の、ギラっとした眼が明奈を真っすぐ見る。


「ならぬ!」


―――頑固さはさすがね。


取り付く島もない程に、一刀両断される。それでも明奈は駄目元で援護を続けた。


「私が責任を持って御息女をお預かりします。それに、一度は現場を見るのも大切かと…」


それでも口を閉ざす廉明。明奈はジャケットの内ポケットを探り、最終兵器を手にした。


「あ、長官。先日の報告書を大変失礼ですがこの場にて提出します」


明奈の急な行動に、廉明は不思議そうな表情を浮かべた。


―――受け取った時からが勝負なんだから!


「明奈…今はそんな「今、御覧下さい」」


明奈の営業スマイルは長官の心の壁を突破した様で、廉明はムスっとしながら封筒を開けた。
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