今宵、月の照らす街で
「最近何か変わったことはないか?」


使用人が持って来てくれたホットミルクを口に含もうとした明奈に、明人が問いかける。


「何もないよ?」


「そうか…」


兄の深刻な面持ちにが、少し気になる。


「なんかあった?」


明人はしばらく俯いたあと、静かな声で返事した。


「…対策室が気になる」


―――…?


「それって…?」


兄は明奈の言葉に答えない。


「兄さん?」


「ま、俺の気にしすぎかな?忘れてくれ、明奈」


明人はそう言って優しい笑顔を浮かべた。


「あまり引き留めちゃ、お前も休めないだろ?俺は先に寝るよ、明奈」


「うん…おやすみ、兄さん」


明人は使用人に車椅子を押されて居間を後にする。


―――兄さんは何を思って対策室の事を言ったのかな…?


明奈はどうしてか、これを詳しく聞かなかったことに、後で後悔するような気がしてならなかった。
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