雲の上の存在
あたしは今、里穂さんと家まで歩いて帰っている。
一応、変装はしてるけど行き交う人には振り返られまくり。
そりゃ、大人気の女優さんと歌手がいるんだもんね。
こういうところで改めて、あたしは芸能人なんだなあって思った。
『私ね、サンライズの藍原翔くんが好きなんだ。』
(…嘘でしょ?里穂さんがライバルなんて…勝てるわけがない。)
「……そうですか。…でも、なんであたしなんかに…」
『私、玲奈ちゃんがデビューした当時から藍原君が好きなんだ。今まで何回も告白してるけど連続でフられてるんだ!』
里穂さんは思い切ったようにあたしに話した。
『玲奈ちゃんが藍原君と同じ事務所で、仲が良いことは知ってた。だから玲奈ちゃんだったら藍原君がなんで私を否定するのか知ってるかなあ、と思って。どう?』
答えるのが辛かった。
あたしは最近、全然 翔ちゃんに会ってないのに里穂さんは会ってたんだ。
嫉妬した。
「どう?…って何がですか。」
(嫌だ、冷たく当たっちゃう)
『何か知ってる?』
「…知りません。」