雲の上の存在
『…なんで知ってんの?』
急に翔ちゃんが真剣になった。
あたしは、本当のことを言わないと
すぐバレるだろうと思ったから
正直に言うことにした。
「里穂さんがさ、あたしに協力してって言ってきたの。」
『…なんで玲奈に?』
「それは、あたしにも分かんない…けど、里穂さんはなんでフられるのか理由が知りたいって言ってた。」
『…前にさ、俺…見ちゃったんだよね。』
(何をだろう…)
翔ちゃんが過去を見る目で語り出した。
『俺と里穂が出逢ったのは、20歳のとき。正直…可愛いなって思った。』
(胸が痛い…)
『で、告られたから軽い感じで付き合ったんだ。』
「………。」
『それから1ヶ月くれぇ経ったとき。たまたま通りがかったスタジオの裏で里穂が他の女優さんにいじめられてたんだ。』
「…里穂さんが?」
『俺は、そこまで里穂に愛情が無かったから助けなかった。じきに収まるだろうって…』
「……嘘…」
『酷いだろ?だけどさ、里穂は見てたんだよね。俺が無視して通り過ぎたこと。』