雲の上の存在
レコード大賞
年末ともなると、アーティストは生放送の歌番組で大忙しだ。
あたしもその中の一人。
高校生なのに勉強している暇もない。
…まあ、まだ一年だからしないけど。
スタジオには沢山の歌手が揃っている。勿論、サンライズも。
あたしは久々に見るアーティスト仲間に軽く挨拶して、用意されたサンライズの隣の席に座った。
“第128回、レコード大賞!”
番組が始まった。
生放送だからいくらなんでも緊張する。
あたしは沢山のアーティストがいる中で熱唱するんだ。
今までは緊張なんてしなかったのに、今年は心臓がバクバクする。
(こんなに緊張するの、初めてだ…)
新人賞を貰った人たちの歌を聞く中、右隣にいた翔ちゃんがあたしの異変に気付いた。
『玲奈?どした?』
翔ちゃんが優しく、あたしの顔を覗き込む。
「や…ちょっと緊張しちゃって(笑)」
『そっか…玲奈でも緊張するんだな(笑)』
「どういう意味さ(笑)」
『昔の玲奈は、ちっこくて可愛かったなあって。あ、今でもちっこいか(笑)』
「なにそれ〜っ!」