奏。‐カナデ‐
「松本・・・言い切れんのか、お前。」
「うん」
「なんで・・・」
片瀬の心が、確実に揺れている。
手を伸ばしていいのか、迷ってる。
片瀬は捨てられるような子じゃない。
・・・だって、こんなにもあなたのことが好きだから。
あなたに、惹かれるのだから。
「悪いこと、自分のせいになんかしないで。
・・・・あたしは、絶対捨てない。離さない。
だから、信じること、諦めないで・・・。」
「松本・・・」
今、1mの距離がもどかしい。
今、あたしたちの距離がもどかしい。
泣きそうな顔のあなたを強く抱きしめることが出来たらいいのに。
一緒に涙を流せればいいのに。
「・・・・片瀬、独りじゃないよ」
だから、もう泣かないでいいんだよ
独りぼっちで震えなくていいんだよ―