奏。‐カナデ‐






「お~い、俺やっぱ帰る。くそ暑ぃし」

「えー!あたしに女独りで31に入れと言うのかお前!!」

外はかなり暑い。
衣替え前の冬の制服では、汗が流れるのを止められないらしい。

「・・・ちっ」

めんどくさそうな顔で舌打ちする片瀬。
でも、帰らないじゃんね。

そんな少しの優しさが、あたしの心を強く惹く。


「ほら、あれだよ。ギャップというか・・・。」

「おい松本!」

少し前を歩く片瀬が学ランを脱いで手招きをする。

「何・・・」

「ほい。よろしく~」

そう言って、バサリとあたしの手に学ランを置く。

・・・・。
そうですか。
パシリですか。

「くっそぉ・・・・俺様野郎め・・・。」


宣言撤回。

なにがギャップじゃ優しさじゃ~あ!!




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