奏。‐カナデ‐






「・・・お、俺らのクラス勝ってんじゃん」

体育祭当日、半分ほど競技が終わった。
片瀬がぽつりと言ったことにあたしは反応。

「片瀬・・・。リレー出るん?」

次はあたしたちの学年のリレーがある。

片瀬の手を気にしながら聞くと、片瀬が少し顔を上げる。
いつもの余裕の笑み。

「当たり前。」

「でも・・・」

「ばーか、手とか関係ねぇし。元々大した怪我じゃねぇんだから考えすぎんなよ」

軽く叩くようにあたしの頭に手を置く。

決して『撫でた』とかそんな優しい接し方ではないけれど、十分彼の優しさが感じ取れる。


「お前リレーでもコケんなよ~」

そう言って歩いていく片瀬を見たまま立っていると、

「あ~ラブいですねぇ」

「っ奈々!!」

後ろに突然奈々が立っていた。

「はぁ~あ、あれ絶対咲弥のこと好きだよね~」

「違うってば。てか何で悔しそうなの」

「だって片瀬イケメンだもん」

「・・・イケメンだったら何でもいーのか」

「そうですけど何か?」

「・・・・・。」

奈々のイケメン好きにはちょっと引くわ。(笑)
あとから「冗談だよ」って笑うけど、その笑顔の裏には何かがありそうな気がする。

・・・あたしはそーいうの、相手から話してくれるの待つっていう性格なんだよね。




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