奏。‐カナデ‐
「―次は1年生の競技、クラス対抗リレーです。」
みんなクラスの色のハチマキを額に巻く。
あたしたちのクラスの色は赤で、なかなかカッコイイ。
「―スタート!」
1番最初の人が走り出す。
みんな滅多に出さないような大声で応援している。
あたしも例外ではない。
あたしの順番は、真ん中あたり。
そして、片瀬は・・・足が速いから、アンカー。
そして、あたしの番が回ってくる。
心臓のスピードが速くなる。
前の人に今、バトンが渡った。
ふと、視界の隅に片瀬が映った。
口パクで何か言っている。
(コケんなよ)
あたしはピースサインをして、すぐにバトンを受け取った。
「咲弥~おつかれ」
「は~抜かされなくてよかったぁ~~」
「あとは、最後片瀬が頑張ってくれるかだね~」
奈々の視線の先の、片瀬を見る。
リレーはもう終盤に差し掛かっていて、今あたしたちのクラスは・・・3位。
1位の人との差はそこまで広がってない。
―アンカーにバトンがそろそろまわる。
片瀬がスタートラインに立ったとき、あたしは少しドキドキしながら彼を見つめる。
額に赤いハチマキを巻き、堂々と立っているその姿は、すばらしく格好良く見えた。
「今、アンカーに次々とバトンが渡りました。」
幹部の放送でそう伝えられる。
もうすでに、片瀬にもバトンが渡っていた。