奏。‐カナデ‐






「―次は1年生の競技、クラス対抗リレーです。」

みんなクラスの色のハチマキを額に巻く。
あたしたちのクラスの色は赤で、なかなかカッコイイ。


「―スタート!」

1番最初の人が走り出す。

みんな滅多に出さないような大声で応援している。
あたしも例外ではない。

あたしの順番は、真ん中あたり。
そして、片瀬は・・・足が速いから、アンカー。


そして、あたしの番が回ってくる。

心臓のスピードが速くなる。
前の人に今、バトンが渡った。

ふと、視界の隅に片瀬が映った。

口パクで何か言っている。

(コケんなよ)

あたしはピースサインをして、すぐにバトンを受け取った。


「咲弥~おつかれ」

「は~抜かされなくてよかったぁ~~」

「あとは、最後片瀬が頑張ってくれるかだね~」

奈々の視線の先の、片瀬を見る。

リレーはもう終盤に差し掛かっていて、今あたしたちのクラスは・・・3位。
1位の人との差はそこまで広がってない。


―アンカーにバトンがそろそろまわる。

片瀬がスタートラインに立ったとき、あたしは少しドキドキしながら彼を見つめる。

額に赤いハチマキを巻き、堂々と立っているその姿は、すばらしく格好良く見えた。


「今、アンカーに次々とバトンが渡りました。」

幹部の放送でそう伝えられる。

もうすでに、片瀬にもバトンが渡っていた。



< 38 / 39 >

この作品をシェア

pagetop