奏。‐カナデ‐
「ぅおっ!松本?!」
ピアノを弾く指も止めて、片瀬はかなり驚いた声を出した。
「やほっ!片瀬、ピアノ弾くんやね!超上手いじゃん」
あたしが褒めると、片瀬は悔しさと恥ずかしさが混じった顔をした。
「くっそ。誰にもバレたくなかったのに・・・」
「学校でピアノ弾いてたらすぐバレるっつの」
あたしは、扉のところから片瀬とピアノの方に寄っていった。
「ねーねー今のなんて曲?」
「教えねー」
「何それ!いーじゃん教えるくらいっケチ!」
「うっせぇ!つか、ケチじゃね―」
早瀬が言っていた瞬間、ゴンッと鈍い音がした。
あたしの肩に掛けていた、サックスのケースがピアノにぶつかったのだ。
「ぎゃっやば!」
「お前っ学校のピアノに当てんなよ!・・・つか、何それ?」
片瀬がサックスのケースを指差して言う。
あぁ、ケースだけじゃわかんないか。
「サックスだよ。部活で使ってんの」
「お前サックス吹けんの?吹いてみて~」
「えっ・・・!」