奏。‐カナデ‐




「いーじゃん。お前俺のピアノ聴いただろっ」

やばーい。
失敗した。言わなきゃよかった・・・
ここで『吹けません』なんて、カッコ悪すぎて言えない!

少しもう、涙目になりながらあたしはサックスを準備した。

今もし、たまたま音出たりしないかなぁー(泣)


「・・・・ぷしゅー」

サックスの中を、息が通り抜ける間抜けな音がした。

・・・うそ。まじ恥ずかしい。


「ぷっ!あははは!!」

片瀬が大声で笑い出した。
あたしは、真っ赤になって片瀬に文句を言った。

「なっ!そんな笑わなくていいじゃんっ!!」

「・・・だって、お前、吹けてねぇじゃん。・・・しかも『ぷしゅー』って・・・!あはははっ!!」

片瀬は爆笑しながら言った。
ありえない。こんな笑わなくたっていいでしょ?!

「片瀬のバカッ!!」

そう言ってあたしが音楽室から出ようとしたとき、片瀬が呼び止めた。


「待てよっ!元気出る曲弾いてやるから、機嫌直せ!」

片瀬が笑顔で、手招きをする。
あたしは仕方なくまた片瀬の近くに戻った。






< 8 / 39 >

この作品をシェア

pagetop