奏。‐カナデ‐
「いーじゃん。お前俺のピアノ聴いただろっ」
やばーい。
失敗した。言わなきゃよかった・・・
ここで『吹けません』なんて、カッコ悪すぎて言えない!
少しもう、涙目になりながらあたしはサックスを準備した。
今もし、たまたま音出たりしないかなぁー(泣)
「・・・・ぷしゅー」
サックスの中を、息が通り抜ける間抜けな音がした。
・・・うそ。まじ恥ずかしい。
「ぷっ!あははは!!」
片瀬が大声で笑い出した。
あたしは、真っ赤になって片瀬に文句を言った。
「なっ!そんな笑わなくていいじゃんっ!!」
「・・・だって、お前、吹けてねぇじゃん。・・・しかも『ぷしゅー』って・・・!あはははっ!!」
片瀬は爆笑しながら言った。
ありえない。こんな笑わなくたっていいでしょ?!
「片瀬のバカッ!!」
そう言ってあたしが音楽室から出ようとしたとき、片瀬が呼び止めた。
「待てよっ!元気出る曲弾いてやるから、機嫌直せ!」
片瀬が笑顔で、手招きをする。
あたしは仕方なくまた片瀬の近くに戻った。