涙の欠片
「リュウ、ごめ…。怖いよ。あたし…、あた――…」
震えて止まらないあたしの口を塞ぐかのようにリュウはあたしの唇に自分の唇を重ねる。
そのまま優しく何度も唇を重ね合わした後、リュウはそっと唇を離す。
「もう…しゃべんな」
リュウはあたしを抱き抱え、ベッドに寝かす。その横にリュウは寝転びあたしの身体をギュッと抱え込む。
布団に包まるあたしに「ごめんな…」とリュウの小さな声が聞こえた。
その優しい声でまた涙が込み上げてきそうになった。
あの時、リュウに出るなって言われて、しつこく聞けなかったのは“しつこい女”だと思われたくなかったからだ。
しつこく言って、しつこく聞いて嫌われたくなかった…
リュウは悪くない。
リュウは毎日、釘を刺すようにあたしを止めた。
それを破ったのは、
あたしだ。
この頃から、あたしとリュウの距離は少しずつ狂い初めていた…。