涙の欠片
リュウの隣に居ても寝れない日々に頭痛が増し、そしてリュウに対する嫉妬心。
何も話さないまま暫く経った時だった。
テーブルの上に置いてあるリュウの携帯が鳴り始める。
リュウはその音を無視するかのように、ただずっとタバコの煙を吐き続ける。
「出ないの?」
無表情のリュウに小さく問い掛けるとリュウはダルそうに携帯に手を伸ばす。
2ッ折りの携帯をパカッと開け音を切り、そのまま携帯をパチンと閉じて後ろのベッドに投げ捨てた。
この光景を見るのは初めてじゃない。
夏休みに入る前にも見たし、夏休み中にも何回か見た。
“誰?”って聞いても“ツレ”って答えるだけで、リュウはそれ以上は何も言わない。
しつこく聞いて嫌われるのが怖いから、あたしもそれ以上は何も言わない。
これも前からのトラウトだ。
夢に出てくる悪夢とかぶってしまう。だから、あたしの口は開かない。
そして、あたしを混乱させたのは夏休みの2日前だった。