涙の欠片
朝、リュウが起きてもまったく普通で夜中の電話すら忘れているようだった。
新学期が始まりリュウは何事もなく、あたしを送ってくれる。
でも、あたしはリュウの事が嫌いになった訳じゃないけどリュウに対して冷たくなっていた。
リュウと一緒に居ると、あの日の事が頭に浮かんで苦しくなる。
2週間が経ったある日、リュウは何も話さないあたしに口を開いてきた。
「お前、何で最近話さねぇんだよ」
いつも通り車が停まっている空き地に行くとリュウはポケットからタバコを取り出し1本くわえて火を点ける。
リュウから目線を逸らすあたしに「おい」と低い声が頭上から落ちる。
それでも無言を突き通すあたしにリュウは舌打ちをする。
「いい加減にしろよ、お前…」
ため息混じりで言うリュウの言葉で、あたしの口はとうとう開いた。
「……のはこっちだよ」
「あ?」
「だから、いい加減にしてほしいのはこっちだって言ってんの!!」
「んだと?」
リュウはタバコをくわえたままあたしを鋭く睨み付け、そんなリュウにあたしも睨み返す。
ずっと睨み付けるあたしにリュウは口からタバコを離し、「俺が何した」と低い声を出す。