涙の欠片
「由美って誰よ…」
「あ?」
「だから由美って女だよ。バーベキューから帰ってきた夜中、リュウ話してたよね?あたし聞いてたんだから…。その人とヤる仲なんでしょ?セフレなんでしょ?」
声を張り上げるあたしにリュウは口からタバコを離し、怒の通った顔付きから少し目を見開きあたしから視線を落とす。
何で逸らすんだよ…
何でよ…
「ねぇ、リュウ答えてよ。あたしと付き合っててセフレなんか作ってんの?」
「セフレじゃねぇよ。アイツが勝手に言ってるだけだ」
「そんなの分かんないじゃん」
「信じろよ。アイツとはすげぇ前に関係があっただけだ」
「今もでしょ?」
睨み付けて言うあたしにリュウは短くなったタバコを地面に落として踏みつけ、また新しいタバコをくわえて火を点けた。
「今は何もねぇ」
「うそ」
「嘘じゃねえよ」
ため息混じりに言うリュウを見てすぐ、あたしはこれ以上口出しするのを止めた。
しつこい女は嫌われる。
だからあたしは何も言わずにリュウに背を向けて足を進めた。
「おいっ、」
背後から聞えてくるリュウの声を無視して、あたしは足を進め自分の家まで歩いて帰った。