涙の欠片

麗さんの文字に少し躊躇ったが、あたしは通話ボタンを押し耳に当てる。


「…恵梨菜ちゃん?」

「うん…」

「リュウが今日の16時まで学校で待ってるって。俺が掛けたら出ないって言われたからあたしが変わりに電話したんだけど…。
ねぇ…、今朝聞いたんだけどさぁ、恵梨菜ちゃん本気で言ってんの?ねぇ、恵梨菜ちゃん…」


麗さんの沈んだ声が電話口から漏れてくる。


「あたし、もう決めたんです」

「もっと考え直しなよ。リュウ待ってるって…、だから必ず行ってね。あたしからのお願い」


麗さんはそう言って電話を切り、あたしもパチンと携帯を閉じた。

テーブルの上を片付けた後、まとめた荷物を持って部屋を出た。

出てすぐに鍵を掛け、あたしはその鍵をポストの中に落とした。


カチャン…と落ちる音が響くと今までのリュウとの生活が込み上げてきて思わず涙が出そうになった。

だけど、これは自分で決めた事。


だから後悔はしたくない。


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