涙の欠片
「何?友情ごっこでもしてんの?」
隣から聞こえてきた声に見上げながら振り向くと、口角を上げて微笑む一人の男が立っていた。
短髪で茶色の髪をワックスで無造作に立たせた男。
その男を見て一瞬、あたしの視線が止まる。
リュウの髪型とかぶってしまう…
でも顔はイカツクなくて優しい顔。
「そう。友情ごっこだよ」
美沙が明るく微笑むと男はフッと笑って「ガキくせぇ」と呟く。
「うるさい!!直人は黙ってろ!!」
そう言って美沙は直人と言う男から目線をあたしに切り替えた。
「あっ、そうだ直人はあたしの彼氏なんだ…、一応ね」
美沙は曖昧に笑って直人に軽く指差す。
チラッと見上げると直人はうっすら笑い「どーも」と言って頭を下げる。
「あっ、恵梨菜です…」
とりあえずあたしも名前を言って頭を下げてみた。