kiss・kiss・kiss


『お前、なに泣いて…んだよ』


陵は、ゆっくりとこちらに向かってきて、優しく言った。


『顔、あげろよ』


もう一度優しく言う。

でも顔をあげようとしないあたしを見て、陵が強引にあたしの顔を上げた。


「やめてッ!!!」


あたしは陵の手を払った。


見られたくない。見せたくない。陵に、見せれない。

陵の人生を壊したあたしの顔なんて、陵に申し訳なくて、見せれない……。


陵…ごめんなさい……。


「陵…ごめんなさい…自分から早慶大に行けなんて言ったのに、なにやってんだろ……あたしが、あたしが陵の人生を壊した…」


『違う!!!』


陵があたしの言葉を遮る。でも、あたしは、


「そーなんだよ!!!」


陵の言葉を否定する。


違う!?何がちがうの?!!!陵の人生壊しといて、違うなんて言葉かけてもらう価値なんてない。




.
< 93 / 138 >

この作品をシェア

pagetop