【続】インナーラブ~俺は荒海47歳~
以前、上司と来たことのあるバーに向かった。
騒がしい店は嫌だった。
できるだけ静かな店で、ゆっくり時間を過ごしたいと思った。
「今日はほんまに助かった。ありがとう。それと、いつも弁当ありがとう。こんなオヤジに毎日悪いな・・・」
「オヤジじゃないです!!素敵です。部長はみんなの憧れです」
憧れ?
みんなの?
俺、お前だけの憧れでいいねんで。
山口にだけ愛されたらそれでいい。
俺はお前の愛が欲しいねん。
「・・・踊ろか」
柄にもなくダンスなんて。
すべすべの山口の手を握り、俺は自分の気持ちを抑えられなくなりそうだった。
「俺さ・・・転勤でこっち来てからほんまに辛くてな。でも、今は毎日楽しい。何でか、わかる?」
目の前にいる山口と目が合う。
綺麗な瞳。
ライトを浴びてキラキラ光ってる。
グロスで濡れた唇が、ゆっくりと動く。
でも言葉は発せられないまま時間が過ぎる。