バレットフィンク
タケシのスクーターはあまり新しいタイプでは無いが、今のタケシにとっては大事な足なのだ。


否、彼にとってはもはや足以上の存在で、いつも愛着を持って接している程なのである。


もちろんニックネームもきちんと有り、通称「ザック」と名付けていた。


「ザック」


とは、彼がギターを始めるきっかけとなった、ザック・ワイルドから頂戴したネーミングであった。


ザックのギターを聴いた時、瞬時に自分の中に眠っていた何か不思議とも思える、あの圧倒的で爽快さを伴う官能的な感情が呼び覚まされた。


いわゆる「覚醒」と呼ばれている体験に、タケシもそうぐうしたのである。


あの畳み掛けるかのごとき勢いと、縦横無尽にうなりを挙げる分厚いが、丸みを帯びた独特のサウンドに、タケシの心は圧倒されまくると同時に、完全に魅了されてしまった…。



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