夢で桜が散る頃に。
もしお前が俺のところに来る時は、笑って来る事や。
ちゃんと一生懸命生きたと言えて、ちゃんと人生を楽しめたと言える様になったら、こっちに来い。
もし、そう言えんのにこっちに来たら、そっちに戻すからなっ!!



「‥‥要するに、生きろって事じゃないの」



俺は死んでも何でも、お前の事は絶対に忘れへん。
でも、お前は必要があれば、俺の事は綺麗サッパリ忘れるんや。
お前の事を俺の存在で縛り付けとうない、お前には自由でいて欲しい。
お前には、幸せになって欲しい。



「‥‥本当に、バカ、じゃないの?」



でも、言うとくけどな、自由にしてやるのはその人生だけや。
来世では、自由になんかしてやらへんからな。
何処に生まれようが、どんなに姿、形が変わっていようがお前を見つけ出す。
それで、今度は絶対に子供を生むんや。



「‥まだ、引っ張るの‥?」



やから、それまでの辛抱なんや。
それまでの間、俺達は離れるだけなんや。
それだけの事なんや。

菜乃葉、頑張って生きい。

俺が生きれなかった分、俺の分生きてくれ。
生きる理由が見つけきれないなら、俺の変わりに生きろ。
それが、お前の生きる理由や。



「‥何、よ。いなくなっても、何でそこまで私の邪魔をするのよ‥っ!!」

私は手紙を胸にうずくまった。
涙が次から次へと出て来て、止まらなかった。

『泣きたい時はな、我慢せんでええんや。泣きたい時は好きな分だけ泣けばいいんや』

いつか、志黄はそう言って私を抱きしめてくれた。

『お前の泣き顔笑ったりなんてせぇへんから』

今は暖かい腕が伸びてくる事が無ければ、言葉も聞こえない。

『俺の前でだけでは、お前の好きなように感情を出してええ』

でも‥‥ちゃんと感じるから、志黄。



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