夢で桜が散る頃に。
あれから一年の歳月が過ぎた。
桜はまた満開の時期を迎えて、人々を魅了している。
私は今、公園にいた。
志黄が刺された場所の、桜の木を下から見上げていた。
「今年も、綺麗に咲いているわね」
周りから聞いたら、ただの独り言。
私にとっては志黄に話し掛けているつもり。
桜を見ると、しかもこの場所だと、あの悲劇を思い出してしまう。
その度に、寂しい、悲しいという感情が私に襲い掛かって来る。
でも、それでも大丈夫。
志黄がいつも傍にいてくれて、支えてくれているから。
いつも暖かいから。
だから、私は桜を嫌いにならなかった。
「ねぇ、志黄。もう直ぐ桜が散っちゃうわね」
『せやなぁ』
と、残念そうな顔をして言っている志黄が目に浮かぶ。
「来年も、見に来ようね」
『ああ』
私は忘れない。
志黄と刻んだ日々を。
志黄と刻んだ時を。
私が覚えている限り、志黄が存在した時はなくならない。
だから私は志黄の為に生き続け、
もちろん私の為にも生き続ける。
約束は、もちろん忘れない。
来世で、また会おう。
来世でも、貴方を愛したいから。
end