涙の終りに ~my first love~
初恋
初恋なんて呼べるものじゃないけど、異性を好きになったのはかなり幼少の頃だと思う。
保育園に通っている時にお袋に好きな子の名前を言ってたらしいからマセたガキだった。

そして恋愛感情も含め本当の意味で初恋をしたのは中学2年生の時、相手は同級生だった。

彼女の名前は真子。八重歯のある顔の丸い子だった。

学年は同じだがオレのクラスがあるのは4階、そして彼女のクラスがあるのは3階。
その当時、新興住宅地と大きな団地を校区に二つ抱えたオレの中学はマンモス校で
同じ2学年といっても13クラスもあり、階が違えば同じ学校の同級生でさえ知らないまま卒業した連中も沢山いる。

そんなマンモス中学校の中でオレは彼女と出会った。

彼女の存在を知ってからは朝は遅めに学校に行き、帰りは早めに帰る。
理由は簡単、多くの同級生の中で彼女を見つけ遠くからさり気なく見つめる、ただそれだけ。
意味もなく3階の廊下をフラつき彼女を探す、そして遠くから見つめる数秒間が最高の楽しみだった。

早い話しがストーカーの初期段階みたいな事をやっていた。

そんな行為を長く続けていると、やがてオレの存在は3階で浮いた存在となり
「アイツいつも何やってんだ?」みたいな感じで噂となり始めていた。
さすがに自分でもヤバイなと思い、嫌々ながらも3階の徘徊は朝か帰りの一度だけにするようにした。

それでも小学校からの友人等には「ユウジいつも何やってんの?」と不思議がられていた。

オレには何故かあだなと言うものがなく、いつも下の名前ユウジで呼ばれていた。
先生達からも苗字では呼ばれずにユウジと呼ばれ、卒業して何年も経ったある日、
久しぶりにあった同級生から
「ユウジって本当の名前なんだっけ?」なんて聞かれた事もある。
ある意味、ユウジってのがあだなでもあったのかも知れない。

そんなストーカーじみた行為の日々を続けながらも告白するとか手紙を書いて気持ちを伝えるという思いもなかった。

そう、ただ見ているだけで幸せだった。


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