涙の終りに ~my first love~
So Long
そこでいきなりオレは「5分だけ一人にしてくれ!」と言った。
振り向きざまに「なんで?」って表情をする勝史に

「5分だけ思いっきり泣かせてくれ・・・ 5分間思い切り泣いたらもう真子の事で泣かない、そしていつものユウジに戻るから・・・」と
オレは前の二人を見ずに下を向いたまま言った。

その言葉を聞いた勝史は素早くギヤをパーキングに入れサイドを引くと運転席のドアを開けた。
少し遅れてドアを開けたヒロはアルパインのボリュームを全開にし、

「涙が枯れるまで・・・ 」と

何かを言いながら車を降りたが、最後の部分はうまく聞き取れなかった。
車内で一人残されるとブラックキャッツの”ランデブー”が流れ始めた。

「Woo~Woo・・・ 」とヴォーカルの誠ちゃんの声が聞こえると激しく涙が溢れた。
そしてオレは子供のように声を出して泣き始めた。

大人は泣かないもの・・・ 
大人になると泣いてはいけない・・・ 
大人だから人前で泣いてはいけない・・・ 
自分の中でそんな観念があったが関係なく泣いて、涙の海に身を沈めた。

”無駄な事と・・・ 僕は知ってる・・・ 甘く切ないランデブー♪” 
その歌詞を聴くと涙が・・・ただ涙が溢れた。

涙が止めどなく溢れ・・・ 息苦しくて・・・ 呼吸するのも辛かった。
再会の時、ここで語り明かしたあの夜・・・。
あの時、”また会える?”と言ったのは彼女の方だ。
何故あの時に本当の事を言ってくれなかったのか・・・ 
あの時に子供の事を知っていればこんなに辛くもなかった。

ダマされたとは思いたくない、最後の時に真子の言った「言い出せなかった・・・」、
あの言葉を信じたい。

信じてあげたいけど・・・ 苦しかった・・・ 苦しくて苦しくて・・・ 苦い涙が頬をつたった・・・ 。

目を閉じると真子の瞳が浮かび、切なくてオレは自らの拳で太ももを殴り続けた。

何度も何度も殴ったがその痛みは伝わらず、ボロボロになったハートの方が痛かった。

”もうあの日に戻れない事ぐらい分かっているんだ・・・ でももう一度逢いたかったんだよ・・・”と
誠ちゃんがオレの気持ちをそのまま語っていた。

ブラックキャッツのランデブーって曲は、あの時のオレの気持ちそのものだった。


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