涙の終りに ~my first love~
そしてそのランデブーの終りの「Woo~Woo・・・ 」の部分に差し掛かると、
オレはゆっくりと呼吸を整え始めた。

この曲の流れている間ずっと泣いていたんだ・・・ そろそろ約束の5分だ。
「男だろ! 思い切り泣いたらキッチリ立ち直れ!」とオレは自分自身に言うと、
両手で頬を2~3回叩いて気合を入れてからドア開けた。

車を降りる時はオレの真心が入った包み二つも一緒だった。

ボンネットの前で海を見ながら何か話していた勝史とヒロは、
心配そうにこちらを見つめているので、オレは右手の親指を立て唇を尖らせながら片目を閉じた。

そしてそのまま二人の前を通り過ぎると、海に向かって真心を二つ放り投げた。

このプレゼントを残したままでは、いつまでもオレの心の中に彼女達が居そうなので力一杯投げ捨てた。

涙の終りに・・・ 

涙が枯れるほど泣いた涙の海に全てを捨てよう・・・。

何年もの間、色褪せることなく思い続けてきた胸の思い、
それが今オレの手から放たれ消えようとしている・・・

オレは涙の海に浮かんで少しずつ沈んでいく二つの包みを目を細めて見つめた。
少し遅れてオレの傍にやって来た二人も、遠くで小さくなる包みを見つめていた。

すると突然ヒロが「ユウジ、何捨てたの?」と聞くので、オレは真っ直ぐ前を見つめたまま「真心!」と本当の事を言った。

「真心か・・・」とタバコの煙を吐きながら勝史が言うと、おもちゃの方はゆっくりと沈んで見えなくなった。

だけど指輪の方は中々沈まず、ずっとこちらを見ているようだった。

いつまでも・・・ いつまでも波に揺られながらオレの方を見ていた・・・。

オレはその指輪を見つめながら「サ・ヨ・ナ・ラ」と言い、小さく手を振った・・・。

サ・ヨ・ナ・ラ・・・ 

それは14歳から始まったlove storyで初めて使った、最初で最後の言葉だった。




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