涙の終りに ~my first love~
だが同時に
「もう終わった事、あいつには散々嫌な思いをさせられた、もう関わり合うな」
と思うプライドもあり、色んな思いが頭の中で交錯していると、ふと真子の手紙を思い出した。

読まずに燃やそうと思っていたあの手紙・・・ 
そう思うと無性に手紙の事が気になり始めバスのシートを蹴飛ばしながら
”目を通すぐらいしときゃよかった”とイラついた。

落ち着かないオレは走行中にも関わらず後部席から降り口の前まで移動し、定期を運転手側に向けバス停に着くと、ギターを抱えたまま一気にステップを飛び降りダッシュで家まで帰った。

家に着くと大急ぎで学ランのポケットやカバンの中を探したが手紙はなく、
ベットの下を覗いたりタンスの中を掻きまわしたがどこにもなかった。
そんなはずはない、確かに家までは持ち帰ったと何度も部屋の中を探し回ったが
やはりどこにも手紙はなかった。
オレは天を仰ぎながら「マジかよ~」と声を上げその場に座り込んでしまった。

俯いて深いため息を付き、ゆっくりと顔を上げると思わぬところに手紙はあった。

なんとなく捨てずに取って置いたあの天使の置き物。
中学を卒業する時に沢山あった真子との手紙や写真は全て処分したが、修学旅行の夜に貰ったあの陶器の置き物だけは何故かそのままにしてあった。

その天使の横に無造作に握り潰された手紙があった。

置き物と一緒に処分しようと思って手紙をそこに置いていたのか自分でも分からないが、
恐らく真子のものという事で一緒にしていたんだと思う。

紙クズのように丸められた手紙を静かに開くとそこには見慣れた文字が広がり、懐かしい思いと一気に記憶がフラッシュバックした。

「お久しぶりです、元気にしてますか?」

など差し障りのない文章から始まった手紙には
オレと別れて他の男と付き合っていたのか「ユウジが誰よりも優しかった」とか
「本当に大きな愛で包まれていたのが今頃になって痛いほど身にしみる」
みたいな事が綴ってあった。

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