涙の終りに ~my first love~
胸騒ぎ
もちろん聖子を傷つけるのは百も承知、
でもこの問題を引きずったまま悪戯に月日を重ねて行く方が
もっと聖子を傷つけてしまう。

家に帰ると夕食も取らずにそのまま聖子に手紙を書いた。
だが何通書き直してもオレの罪を補う事などできず、聖子を一番傷つけないような文章なんて最低の男の語学では作れるはずもなかった。

部屋の中を何度も書き直して握り潰した手紙でいっぱいにすると、
とうとう最後の一枚になってしまい、
結局「ごめん、真子とまたつき合うのでオレとは別れて下さい」と一行だけ書いて封筒に入れた。

読み返すほどの長い文章じゃないけど、自分でも残酷で惨い内容だと思った。

だけど本当の事を隠さず素直に伝える事、それがオレに出来る最後の思いやりだった。
断腸の思いで書いた手紙に切手を貼り、そのまま人影のない夜道をポストへと向かった。
普通に歩けば5分も掛からないポストまでの距離を遠回りしながらトボトボ歩き、
時より見上げた夜空には聖子の笑顔が浮かんでいるように思えて切なかった。

ポストの前までやって来ても直ぐには投函せず、
街灯の明かりに照らされたままその場に立ち尽くし
バスの中で始めて声を掛けた時の事や神社での出来事なんかを思い浮かべ

「本当にこれでいいのか・・・ ここまでしてまた真子とつき合う必要があるのか・・・」
と後悔していた。

物憂い影を落とす赤いポストを見つめていると、
虫の知らせというか今までに体験した事のない妙な胸騒ぎあり、
今日はこのまま帰ろうかと諦めかけていると、
遠くから自転車でこちらに向かって来る人の気配を感じ、
慌ててポストに手紙を押し込むとオレはその場から逃げるように走り去った。

家に帰ってからも変な胸騒ぎが続き、何かにすがるように膝を抱え部屋に閉じこもっていた。

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