涙の終りに ~my first love~
何なんだろう・・・ この胸騒ぎは・・・ 
何かとても重要な事を忘れてる、そんな感じだった。

どれくらいじっとしていたのだろう・・・
やがて呼吸も落ち着き”本家”で遅い夕食を済ませ部屋に戻ろうと外に出て何気なく郵便受けを覗いて見ると、そこには一通の手紙が入っていた。

思わず「あっ!」と声を上げポストの中から手紙を取り出すと、それは聖子からのものであり、胸騒ぎがして落ち着かなかったのはこの事だと直感した。
この手紙はおそらく午後の時点で配達されていたんだと思う。
だから公園で真子を見掛け猛ダッシュで帰ってきた時にはすでに郵便受けの中にあったはずで、それをオレが確認していないだけだった。

愕然としたオレは聖子の手紙を額にあて、今日は運命の歯車がことごとく狂っていると思い部屋に入ってからも中々手紙の封を切る事ができずにうな垂れていた。

はっきり言って手紙を開けるのが恐かった。

聖子がこの手紙を書いている時点でオレ達はつき合っている。
だから神社でのデートが楽しかったとか、オレの部屋での甘い出来事などが綴られているかと思うと
心が痛くて胸が張り裂けそうだった。
例えば何か一つでもいい、聖子を怨めるようなところがあれば楽なのに
悲しいかな彼女を責めれるような汚点は全く無く、目を閉じれば浮かんでくる笑顔はどれも優しかった。

重い瞼を開き、ふと視線をやると陶器の天使もこちらを見ながら微笑んでいた。
思えば聖子もこの天使に気付いていたに違いない。
そしてそれは真子からの贈り物だと思っていたに違いない。
しかも天使二人の間には”いつまでも仲良く”なんて刻まれている。
だけど聖子はこの天使の事をオレに問い掛ける訳でもなく、責める事もしなかった。

そんな聖子なのに・・・ 彼女の事を思えば思うほど辛くて苦しかった。
しかし手紙を読まないと再び真子のような事になり兼ねない。

ふるえる指で封を切り手紙を取り出すと、

そこにはオレを地獄の底に突き落とすような内容が書いてあった。

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