涙の終りに ~my first love~
最低の男
「ユウジとつき合うようになってから、まだあまり経ってないけど聖子はユウジの事が大好きです、ユウジを思う気持ちは日増しに大きくなるばかりです、いつも一緒にいたい。
だからユウジにもっともっと好かれる女性になりたい」と、
これだけでもオレを打ちのめすには十分だったのに、イラストで聖子は自分に見立てた女性の絵を書き、
「髪型は? 服装は?」と矢印で引っ張ってオレに好みを記入して欲しいと書いてあった。
髪型にしても「肩にかかるまで?それとも首まで?」と細かく質問してあり、
最後に音楽は「Rock'n'Rollなら何でもOK!よね」と締めてあった。

もう言葉もなかった。

体中の力が抜け、魂だけが暗くうねる深い闇の底に落ちていった。
きっと聖子はオレの好みが記されていると思い返信の手紙を開ける、するとそこにはたった一行だけ別れの言葉が綴られているなんて・・・  最低だ。
オレはなんて酷い男なんだろう。
オレのやった事は恋愛感情以前に道徳に反する問題だ。

聖子はこんなオレの為に・・・ こんな最低な男が望む、理想の女になってくれようとしていたなんて・・・

気がつくとオレは夜道をフラフラと夢遊病者のように歩いていた。
そして何処をどう歩いたのかポストの前に立ち、
無理な事は承知の上で投函口に手を突っ込み聖子に宛てた手紙を取り戻そうなどしていた。

すべては手遅れと知りながらも身体を動かさないと気がすまなかった。

仮に手紙が取り戻せたところでこの問題が解消されるわけでもない、でも何故か身体だけが無意識に行動いていた。

しばらくすると背中の方で赤いフラッシャーが回っている事に気付き正気に戻った。
振り返ると白と黒のツートンカラーの車が停車しており、車内の制服を着た二人がこちらを見つめていた。



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