涙の終りに ~my first love~
ひびわれたグラス
あくる日からいつもと変わらない日常が続いた。

オレからの残酷な手紙を受け取ったであろう聖子は通学の時間帯を変更したらしく、
二度と同じバスになる事はなかった。

時間を変更されたのは当然の事ながら、勝手なオレはそんな聖子を恋しく思うようになっていた。
時は流れ遠い過去の出来事になってしまった今でも、恋しい思いは懺悔の形で心に残っている。

あの頃のオレは他人に比べ自分だけが弱い男だと思い込み自傷的になっていた。
他の男なら当然の如く聖子を守り、真子の事なんか相手にしないだろうと思うとやるせなく、自分で自分の事が嫌でたまらなかった。

気持ちを切り替えよう、心を大きく持とう、そして何より聖子を犠牲にまでして真子とつき合うんだ、今度こそはつまらない理由で別れてはいけない。
自分にそう言い聞かせていた。

だがそんな不安もすぐに解消した。
何度か真子と会って二人で話しをしていると、やっぱりオレはこいつの事が大好きなんだと思った。
それは髪を撫でる仕草であったり、日常の本当にさり気ない仕草を見て自分がやすらぐ瞬間に実感していた。

聖子の時はやはり愛されていたと思う。

真子の場合はいつもオレが太陽のような愛情を降り注ぎこちらに向かせていないといけない。
そしてそれが真子のハートに届かなくなると、理解に苦しむ行動が始まり別れを宣告されてしまう。
でももうそれでいい。
弱い男がそんな女を好きになってしまったんだから仕方ない。

それでくっついたり離れたりを繰り返しながら、いつの日かオレの方が別れを口にした時、その時が本当の別れで完全なる終止符だと思った。

心やすらぐ愛しい横顔を見つめながらオレはそう予感していた。



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