涙の終りに ~my first love~
オレは目の前で起こった一瞬の出来事がうまく理解できず、振り返る事ができなかった。
その後すぐにオレの右側を4~5人の男が駆け抜けて行くと、そのままそいつ等が走って来た方向に向かって歩き始めた。

「なんで・・・ ねぇ真子なんで 何故おまえはこんな所にいるの・・・」

「お腹が痛かったんじゃないの・・・」

「真子・・・ オレはここにいるよ・・・ こんなに愛してるのに何故苦しいの・・・ 」

独り言を繰り返しながらフラフラと歩き、
自分の足ながら地面についていない感じだった。

そのままバス停までくると、次のバスに乗り込みいつもの座席に座った。
何度も記憶を整理し、目の前で起こった現実を受け入れようと努力したが
真子を信じようとする心が真実の受け入れを拒んでいた。

交際相手とのデートって他のどんな事よりも最優先じゃないのかな・・・ 
少なくともオレは真子がすべてだ。
オレの場合、腹が痛いなんて始めから問題外で熱があってどんなにキツくても真子に会いに行く。
オレは前のシートにうつ伏せて、必死に彼女気持ちを理解しようとしていた。

しかし真子は楽しそうだったな・・・ 
あんなに楽しそうな顔、久しぶりに見た気がした。
そう思うと同時にその笑顔がたまらなく憎くて悔しかった。
オレの前では見せない笑顔、
そして何より年上の女性と街へ出掛ける方を選択した事が
悔しくて悔しくてたまらなかった。

「真子、どうしてオレじゃないの・・・」

そう思うと白いラバーソウルが滲んで、一粒の涙がスローモーションで落ちていった。

涙を隠しながらバスを降りて、家に帰ってから冷たい部屋で陽が落ちても灯りも点けずにじっとしていた。

そして辺りがすっかり夜に染まった頃、外に出て公衆電話から真子に電話を掛けた。

電話を取ったのは彼女だった。
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