涙の終りに ~my first love~
かくしてオレの初めての彼女、異性との交際は中学2年生の二学期、寒い季節に始まった。
冬の季節に始まった交際だから、風が冷たくなり雪が舞うと思い出す甘くせつない思い出が沢山ある。
真子はオレの前に数週間程度付き合った彼がいたらしいがそんな事どうでもよかった。

交際が始まったと言っても日々の暮らしになんの変化もなく、バスケ部の彼女とは下校前の数分しか話せなかった。
下校部のオレと彼女が授業終了から部活に向かうまでの僅かな時間に待ち合わせ会話を交わす、その程度だった。

待ち合わせ場所はいつも4階のトイレ前。
この待ち合わせ場所は3年になってからも変わらなかった。
会話と言ってもオレの質問に真子が答える程度。

その質問もありきたりな「趣味は?」とか「好きな音楽は?」とか。
そんな事聞いてどうすんのと思える「家族構成」とか聞いていた。
早い話し、二人きりになれればそれだけで良かった。

日々の暮らしに変化は無かったが、やはり彼女が居ると居ないではオレ個人の日常は様変わりした。
いつも時間さえあれば彼女の事ばかり考えていた。自分が一人で部屋にいると
「今頃真子も一人で部屋なのかな」とか。
そして二人で電車やバスに乗ってみたい。
行先なんてどこでもいい。
街に出て二人で買い物もしたい。
二人だけで映画も見てみたい。
常に真子とオレを絡ませた空想ばかりしていた。

今のように携帯電話もなく、したがってメールのやり取りももちろんない。
彼女の家に電話するのもかなりの度胸がいった。

ヘアースタイルを気にしだしたのもこの頃からだった。
他人からの見た目なんかどうでもよく女にモテたいとも思わなかった。
ただ真子一人の前ではいつもカッコ良くありたいと思った。

そして真子の中で掛け替えの無い一人の男になりたいと願った。
それはオレの中で彼女がすでにそうだったから。

真子の事で一日が始まり、そして終わった。

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