涙の終りに ~my first love~
ワキ毛マニア
マミとは次の日曜にバス停で待ち合わせた。
その日の朝はギリギリまで寝ていたのを覚えている。
ダラダラと寝返りを繰り返してそろそろヤバいって頃に起き出し、
グリース片手にリーゼントをキメてロック系かロカビリー系かどちらかを着ていこうか迷っていると待ち合わせ時間を過ぎて家を出るような形になってしまった。
結局オレが選んだのはロカビリー系だったけど選んだというよりは途中で我に返り、
「マミ如きに何気合入れてんだ」とバカらしくなり手に持っていた方を着用しただけだった。

家を出ても待ち合わせ時間はとうに過ぎているのに、走って行くわけでもなく、
「どっかの誰かさんの時とは大違いだ」と
苦笑いしながらオレはのんびりバス停に向かった。

そしてバス停に着いた瞬間、我が目を疑った。

マミはバリバリのロカビリーファッションで色こそ違えど豹柄までもが同じで、
知らない奴等からすれば
オレ達は恋人同士で同じファッションでキメてると思えた。
遅れて現れたオレの存在に気付いたマミはこちらに近寄って来ると、

「こんな美人を待たせて何考えてんだよ!」

といきなりオレのケツに蹴りをカマして来た。
蹴られた御陰で正気に戻ったオレは「ゴメン、ゴメン」と謝りながら”ファッションはイケててもやはりこいつはマミだ”と思い、
一瞬でもそんなマミに心をときめかせた自分が情けないと思いながら、
バスに揺られ街に向かった。

車内で上機嫌のマミと違ってオレは”街では誰にも会いませんように”とあらゆる神に祈りを捧げていた。
バスを降りてからも腕を組んでまとわり付くマミに「もう少し離れろ!」とオレが言うと、「ユウジの方から誘ったんでしょう! 少しは我慢しなさい!」と逆に怒鳴られ小競り合いをしながら映画館に向かった。

映画の内容はロックバンドの女性ヴォーカルが街に出て苦労をしながら
有名になって行くサクセスストーリーだったけど、内容よりもオレが一番印象に残ったのはその女性の入浴シーンだった。
実在するロックバンドの女性ヴォーカルが本人役で自ら出演していたので
入浴といっても肌の露出はないと思っていた。

だけど実際は全裸でバスルームに現れさらに驚いたのは、
ワキ毛までも生やしていた事だった。



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