涙の終りに ~my first love~
過ぎ去った日々
数日が過ぎた。
聖子の死を受け止め心の中では整理できたような気がしていたけど
やはり直接会って謝りたかったという懺悔の思いは残った。

そんなある日、仕事帰りのラッシュの中で信号待ちをしているとオレの車の前を中学生ぐらいのカップルが横断して来た。
そいつ等は手こそつないでいなかったが常に肩を寄せていて、
恋愛という物語の中では一番良い時期だなとオレは目を細めた。

そしてその男の方に自分を重ね、
オレがアイツぐらいの時は身も心も立派な大人だと思っていた。

「ひょっとしたら目の前を通り過ぎようとしている彼も自分は大人だと思ってるのかな。
でもそれは違うぞ、二十歳を目前にしたオレからすれば、いくら粋がったところで所詮は年相応の中坊にしか見えんぞ」

と自分に見立てた彼をあざ笑っていた。
そして何気なく彼女の方に目をやった途端、何故かオレは急に真子の事を思いだした。
別にその彼女が真子似ていた訳でもないが、
彼氏を自分に見立てた後の自然な流れだった。

やがてシグナルが青に変わり、ゆっくりアクセルを踏み込むと
「真子は今何してるんだろう・・・」と彼女の今現在が無性に気になり始めた。

考えてみると真子の方にも最後のあの場面以来会っていなかった。
オレを避けていると勘違いしていた聖子と違って、真子の方はオレが避けていた。

当事者の彼女だけを避けるだけならまだしも共通の友人等の取り持ちにも耳を貸さず、
徹底して拒絶したんだから無理もない。

したがって当然の如くその後の消息は途切れたままだった。

”今さらあんな女どうでもいいじゃないか、
裏切りを繰り返したのは彼女の方なんだから”と思ってはみたが
聖子の件があまりにも衝撃的だったのでどこかすっきりしなかった。

心の底から愛した女、そしてオレを散々苦しめた女。どちらも遠い過去の出来事ながら
苦しめられた苦い思いの方はかなり薄れていた。

”考えているより行動だ!”そう思ったオレは真子の家の方にハンドルを切った。

家の前まで行けばひょっとしたら姿が見れるかも知れない、
確認さえすれば要らぬ心配で済む事だ、
ましてオレがどの車に乗っているか知ってるはずもないし、
フルスモークだから車外からオレの姿は確認できない。

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