涙の終りに ~my first love~
悪い夢
数週間が過ぎて諦めの境地に浸っていると、思わぬところから情報が入った。
情報をくれたのは同じ職場の同僚の彼女になっていた雅美からで
雅美は真子と同じ高校に通っていた事からオレ達の事も良く知っていて面識もあった。

電話をくれた雅美はまず
「今頃になって逢いたくなったんだね、あの時は真子の名前を出しただけで怒ってたくせにさ」と嫌味をチクリと言ってから本題に入った。

雅美が言うにはオレと別れた後ぐらいから真子の生活態度が変わり始め、
服装も派手になり、学校にもあまり来なくなったらしい。
そして出席日数が足りない理由で進級が無理だと知るとあっさり高校を辞めてしまい、
しばらくして街で会った真子は金髪でタバコを吹かし全く別人だったと。
そんな風に変わってしまってからの真子は雅美達と会っても、自分から声を掛けてくるような事もしなくなり、高校を辞めてからの彼女には、はっきり言って良い印象がないと雅美は言った。

ここまでを休む事なく懇々と話した雅美はひと呼吸置いて、生活態度が変わり出した頃、
たまにしか学校に来なかった真子は、
いつも「ユウジに会いたい」と言っていたと、現在の心境では知らなくていい事まで教えてくれた。

雅美の話しを黙ってきいた後、タイミングを見計らって
「それで真子は今どうしてるの?」とオレが一番知りたい部分を尋ねると、

「それは私も知らない」と気が抜けるような返答が返ってきた。

思わず”今現在どうしてるのか知らないんなら電話して来るな!
 傷口に塩を塗るような事だけ伝えやがって”と怒鳴りそうになったが、
せっかくの情報提供者なのでグッと胸に沈め

「もし真子と会うような事があったらユウジが逢いたがってると伝えて欲しい」とだけ言って受話器を置いた。

深いため息をついて自分の部屋に戻ると、これでまた振り出しに戻ったなと思った。

不思議なものでいつでも会えるような状態なら、こんな気持ちにもなっていないと思う。
だけど何処に住んでいるのか元気かさえ分からない、単にそれだけの理由でオレの気持ちは高鳴っているのか?

・・・本当のところは自分でも分からなかった。

ただ裏切られた事や傷つけられた事は忘れてしまい、
オレの心の中にはあの頃のように愛しく思う気持ちが芽生えているのは確かだった。






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