涙の終りに ~my first love~
オレは心の中で
「ここでもダメか・・・」と呟きながら肩を落とすと、
記念式典じたいがつまらなくなり、来賓の祝辞など全く耳に入ってなかった。

”あいつは何処に行ってしまったんだろう・・・ 
せめて元気でいる事だけでも分かればいいのに・・・

聖子のような事になっていなければいい”、そう祈るしかなかった。

真子に逢えるかも知れない。
そんな期待を込めて今日を待ち望んだがその思いも無残に崩れ去った今、
見知らぬオッサン等の祝辞など窮屈なだけだった。

「逢いたい・・・ ひと目でいいから逢いたい・・・」

そんな思いが心の奥から溢れ出し、
高鳴る思いを抑えきれないオレはやり場のない怒りを感じ始めていた。

天井にぶら下がった水銀灯を見つめながら周りを気にせず激しい貧乏ゆすりをし、
やがてオレは勝史が止めるのも聞かず会場の外へと抜け出た。

すると入場門には会場入りしたと思っていた進一が車のトランクを覗き込みながら
ゴソゴソと何かやっていた。

思えば不思議な縁だと思う。

真子の事でオレが何か行動すると必ず進一が絡む。
ドタキャンされた最後に日に街で暴れた時も進一と一緒だった。
だけど進一は真子の存在すら知らず面識もない。
それは最後まで変わらなかった。
そしてまた今回もオレにケツを向けトランクをイジっている進一が目の前にいる。

”こりゃ腐れ縁ってやつだな”と

思いながら進一に近づくと、
原型を留めないほど改造され車種の分からないその車は紫色のメタリックで輝いていた。
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